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ストックオプションの意味とは

ストックオプションの意味とは
(募集新株予約権の申込み)
第二百四十二条 株式会社は、第二百三十八条第一項の募集に応じて募集新株予約権の引受けの申込みをしようとする者に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。
一 株式会社の商号
二 募集事項
三 新株予約権の行使に際して金銭の払込みをすべきときは、払込みの取扱いの場所
四 ストックオプションの意味とは 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

従業員モチベーションとストックオプション

そこには「金融的なものは良く分からないから専門の人に任せる」というスタンスがあり、経営者の皆さまが事業運営の専門家であるという自負の裏返しの部分でもありましょう。事業と金融の断絶、これは企業も個人も踊りに踊った 90 年代のバブルの過度の反省(追い打ちをかけたリーマンショックも含め)から生じてしまった日本の企業社会の深刻な問題と個人的には認識しています。それ自体は問題ではないのかもしれませんが、変化の激しい時代にはその「手を打たないことからくる逸失」が企業の長期趨勢を決める可能性があります。

先ず技術的にはオプションというのは将来のある一定(例えば現在から 3 年後から 6 年後までの間など)の期間に株価が、発行体である企業が決めたある水準(行使価格といって、通常現在の株価より高い水準で設定される)以上であれば、そのオプションを付与された従業員が権利を行使することによって、その行使価格で株式を購入出来、その時点の株価との差額を従業員一人ひとりが享受出来るという仕組みです。当然その一定期間内の株価が行使価格を上回らなければオプションの権利行使は出来ないので、このオプションは無価値となります(仕組みの詳細については沢山の書籍がありますのでそちらをご参照下さい)。

そして、もう一つは言わずと知れた AI を中心とした IT 技術の進化による「相対的低付加価値労働の電子化」でしょう。付加価値の低い労働は機械にやらせる方がはるかにミスも少ないので急速に置き換わっていくのでしょう。企業は、日常の多大な業務フローの中で、何を電子化し、何をアウトソースし、何を「従業員による頭脳労働」に依存するか、そのリソースの配分自体も企業の長期の比較優位性を決める重要な問題意識となってきています。このようなことは勿論、過去「前例がない」ので、今までの「前例」にこだわった価値判断は大変危険となります。

その背後にあるのは、やはり SNS などの台頭により、個人が個人といつでもつながっている時代になったことから会社や社会人としての人付き合いに没頭せずとも(しない方が)、楽しく生きていける時代になったことも大きいでしょう。つまり、企業経営者にとっては、「終身雇用に対して幻想を持たない」、「帰属意識の薄い」そして「多様な価値観・人生観を有する」個人をまとめあげながら長期に事業を発展させる、という以前に増して極めて高度な人心掌握技術を必要とする時代なのです。

もう一つ株式オプションの効能は、「従業員のやる気」の時間軸を企業サイドが多少コントロール出来ることです。例えば、貴社に中期計画が策定されており、その最終年度が3年後だったとしましょう。株式オプションの行使可能期間をそれこそ 3 年~5 年程度に設計することによって、従業員の意識をそこに向けて集中させることが出来ます。

一人ひとりの人間が生きていくためには「交換可能な価値」を生み出すことは必要なはずでして、その効果的な手段が長年の資本主義の歴史の中から醸成された、集団的生産手段である「会社で働く」ということであることは間違いありません。AIの出現によって人間の労働の内容がまさに今後変化していくことも間違いないのですが、そういった時代の変化に会社が適合していけるかどうかも含め「従業員のやる気と創造性」の重要性はさらに増していくのです。勿論「交換可能な価値」を増加させる手段であるオプションなどの仕組みは、従業員一人ひとりのやる気・モチベーションと金銭的欲望を半ば強引に結び付ける打算の産物という言い方もできます。しかしながら、そのような打算さえも効果的に組み込み、会社を発展させるための推進力にしていかない限り、10 年後~20 年後の会社の状態に致命傷を与える可能性を増加させるだけ、と言うことも出来ます。

第2回 有償ストック・オプションにおけるインセンティブについて

峯岸 健太郎弁護士 三浦法律事務所 田中 喜博 あすかコーポレイトアドバイザリー株式会社 金岡 将之 あすかコーポレイトアドバイザリー株式会社

  1. 第1回 有償ストック・オプションとは
  2. 第2回 有償ストック・オプションにおけるインセンティブについて

先日の有償ストック・オプションの記事(「第1回 有償ストック・オプションとは」)において、有償ストック・オプションが、権利行使価格を時価以上で設定すること、業績条件の達成を権利行使の条件としていることから、既存株主にとって懸念される希薄化に対し配慮したインセンティブのスキーム(希薄化の発生の前提として、株価の権利行使価格以上の上昇のみならず、業績条件の達成という企業価値の実体の向上を伴っている必要があるスキーム)として、オプションの保有者(役員・従業員)と既存株主の利害を一致させることが理想となると紹介しました。

今回は弁護士、投資家の見解を交え、有償ストック・オプションのインセンティブについて考えます。

株価上昇時と株価下落時

弁護士の見解

峯岸氏
有償ストック・オプションは、会社法上、発行する上場会社の役職員に対し、第三者割当により、新株予約権を有償かつ時価(特に有利な金額でない)で発行することにより付与されます。
新株予約権を時価で発行する場合、その払込金額は、「特に有利な金額」(いわゆる有利発行)とならないようにするため、一般に、発行会社の依頼を受けた第三者の算定機関により算定された新株予約権の公正価値を下回らない金額とする必要があります。この公正価値の算定においては、新株予約権の行使価格、行使期間のほか、行使条件のうち定量的なもの(例えば、一定の業績条件など)も勘案されることから、公正価値が適切に算定され、それと同額の払込金額が定められていれば、会社法上、新株予約権としては適法に発行されることになります。

峯岸氏
有償ストック・オプションによる利益は、その付与を受けた役職員が新株予約権の行使により取得した株式を売却することにより実現されます。そうすると、有償ストック・オプションのインセンティブの強弱は、株式を取得するための条件、すなわち、行使価格、行使期間、業績条件等の行使条件(総称して以下「行使条件」といいます)をどのように設定するかにより決まることになるものと思われます。
そして、新株予約権の行使条件が勘案されて公正価値が適切に算定され、それを下回らない払込金額が定められていれば、先ほどのとおり、会社法上、新株予約権としては適法に発行されることになります。

上場会社は、証券取引所規則や金融商品取引法に基づく情報開示をする必要があり、有償ストック・オプションについても、適時開示などが必要となります。
証券取引所の適時開示においては、「ストック・オプションとして新株予約権を発行する理由」という項目があります。その中で、東京証券取引所の適時開示ガイドブックの記載上の注意においては、「発行の目的及び理由についてわかりやすく具体的に記載する」、「新株予約権の潜在株式に係る希薄化の規模や新株予約権に付された行使条件等が、発行の理由・目的に照らして合理的であると判断した根拠についても記載することが考えられます」とあります。そのため、これを踏まえて開示を行う必要があろうかと思われます。

投資家の見解

田中氏
あすかバリューアップ戦略は「国内企業の経営者を支援すること」を理念に掲げ、中長期的な視点で投資を行い、経営者と対話しながら企業価値の向上を目指しています。我々は2005年の設立以降、同戦略への投資助言を通じて、中長期的な視点で投資先企業の向上のための取組を行ってきました。我々はその活動を「バリューアップ活動」と称しています。具体的には市場環境・ビジネスの競争力・経済性分析や株価分析などを通じて価値創造の要となるドライバーについての仮説をたて、仮説の実現に向けて、時間を掛けて経営者との対話に取り組んでいます。

金岡氏
中長期的な視点で投資を考えた場合、オプションの付与条件や行使条件に近視眼的な評価基準が導入され、結果的に少数株主の利益が損なわれる事が無いかという点を懸念しています。 ストックオプションの意味とは
例えば単年度業績をベースとした短い期間での新株予約権付与や付与後の行使期間が近い有償ストック・オプションで、これらに対しては原則的には賛成できないと考えております。理由は経営者が短期利益を追求してしまい、長期利益を犠牲にしてしまう可能性が高いのではと考えているからです。
もともと、株式価値は原理的に長期的なキャッシュフローの集合体であり、大多数の株主は経営者に長期的なキャッシュフロー拡大や利益拡大を求めているはずです。一方で、経営者はインサイダーであるために短期的な利益やキャッシュフローを操作できるポジションにいるわけです。もちろん、企業のゴーイングコンサーンを前提に長期的な企業価値の最大化を目指し経営している経営者が大半であると信じておりますが、近時散見される比較的短期の業績達成をトリガーとした有償ストック・オプションを株主に提案してくる経営者は、短期的な利益操縦により自分たちの役員報酬を引き上げることを優先していると見られてもおかしくないと思います。

当然こういった提案は有利発行であることから株主総会決議事項で過半数の同意を経て決定に至る訳ですが、その過程で提案が利益操作しやすい短期利益を条件とした単年度の役員報酬に近いものであり、その後の長期的な価値拡大を条件としたストック・オプションではないことを一般株主がどこまで理解して賛成票を投じているのか疑問に思います。
例えばですが、そもそもイン・ザ・マネーのオプションが付与され、極めて短期間で付与対象者の役員が億単位の利益を得るケースも過去にはありました。事実上の現金賞与です。では、このようなケースで株主にわかりやすく正々堂々と、現金で役員報酬として同額の現金を払って下さいというような議案がでてきたら賛成する株主はどの程度いるでしょうか?
このようなスキームは、短期的な利益によってカモフラージュされた株主からの利益搾取と誤解されてもおかしくないとも思っています。そのような誤解を無くすためにも同スキームの提案は避けるべきではないかと考えています。

左から、あすかコーポレイトアドバイザリー株式会社 田中 喜博代表取締役COO、金岡 将之ディレクター

左から、あすかコーポレイトアドバイザリー株式会社 田中 喜博代表取締役COO、金岡 将之ディレクター

田中氏
重要なのは、オプションが行使される事で発生する希薄化が付与対象者である経営陣によって作り出された企業価値に対する正当な対価と評価できるかどうか?という事かと思います。
先ほどのコメントでも触れてはおりますが、我々は長期投資を基本としていますし、株価は長期的にはゴーイングコンサーンに基づき算出される将来のキャッシュフローを表象すると考えています。したがって一義的には行使条件がクリアされ、株価が上昇したとしても、それが長期的に見た企業価値上昇を伴うものではなく、目先の利益水準の変化による株価変動なのであれば、株主にとっての重要な権利である投資持分の希薄化を認める事は出来ないはずです。
例えば短期の利益を行使条件に設定した場合、経営者側には長期の利益を犠牲にしても短期の利益条件達成を実現させようというインセンティブが働きかねません。株価は短期の利益改善に反応して上昇するかもしれませんが、これは企業価値の上昇ではなく、長期的には株価が下落するリスクを含んでいると言えます。

金岡氏
まず、我々は投資先企業の経営者と資本政策に関しても定期的に対話をしており、このような株主価値を棄損するような資本政策を実施するような事の無いようコミュニケーションを続けております。また、仮にこのような資本政策を株主総会議案として提案してきた場合は早急に会社側と対話を行い、会社側の真意について理解を進めます。その上で、これらの資本政策が本当に株主の利益を損ねるものであると確信した場合は、議案の取り下げをお願いし、それが難しい場合には反対票を投じるべく投資助言を行います。

田中氏
上でのコメントはオプションの行使に対してやや否定的な印象を与えたかもしれませんが、我々は経営陣の真摯な努力により本当に企業価値の向上がみられるならば、その対価として株主が持分の一部を経営陣に提供する事は両社にとっての利益のアライメントの見地からも望ましい事であると考えます。
ただし上記に述べさせて頂いたように、経営陣と株主の間には情報の非対称性が存在する事から、誤解を避け、お互いの真意を理解するための努力が必要であると考えます。
そのためには透明性が高く長期的な企業価値向上とリンクした報酬体系が望ましいと思っています。具体的には単年度の報酬は過去の実績と連動した現金での報酬体系とすべきであり、有償ストック・オプションであれば、少なくとも今後3年程度の中期的な業績目標などのハードル条件を付したものにすべきではないかと思います。なおハードル条件設定に当たっては、既存株主にとっての希薄化が十分正当化され、経営陣の経営努力が明確に評価出来る高い目標であるべきですし、さらに大切なのは行使された結果得られる株式についても短期に売り抜けるのではなく、株主利益とのアライメントが成立するよう一定期間は売却制限を付けるべきではないかと考えます。

また、最近ではストック・オプション付与する対象者を今後の貢献度に応じてフレキシブルに選択できる法人課税信託というスキームは付与者が当初から決まっている有償ストック・オプションと比べるとより良い報酬体系ではないかと思っております。実際、我々の投資先の経営者には中期的な業績目標をベースとした有償ストック・オプションや法人課税信託のスキームを提案しており、採用して頂いた会社も数社あります。

  1. 第1回 有償ストック・オプションとは
  2. 第2回 有償ストック・オプションにおけるインセンティブについて

三浦法律事務所 弁護士。2002年弁護士登録(55期)、濱田松本法律事務所(現 森・濱田松本法律事務所)入所。2006年から2007年金融庁総務企画局企業開示課で専門官(任期付公務員)として、金融商品取引法制の政府令案の企画立案やパブリックコメント作成等に関与。上場会社の株式など発行案件や情報開示、証券会社等の規制対応・当局対応、新規での業登録など、金融商品取引法その他金融規制に関する案件を多く手がける。『金融商品取引法コンメンタール1-定義・開示制度〔第2版〕』(商事法務・2018)共著など、講演・著書・論文多数。2019年に三浦法律事務所を共同で立ち上げる。

あすかコーポレイトアドバイザリー 代表取締役COO 日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)で上場株運用に携わった後、ジャフコにて事業投資・企業価値向上を経験。ユアサエレクトロニクス、キッチンハウス、ヴィクトリア、ガソニックス等の社外取締役・社外監査役を経験。モルガンスタンレー証券会社で中小型企業調査に従事した後、あすかコーポレイトアドバイザリーに参画。大阪外語大学アラビア語学科卒。ペンシルバニア大学ウオートン校経営学修士(MBA)日本証券アナリスト協会検定会員

あすかコーポレイトアドバイザリー ディレクター りそな信託銀行にてファンドマネージャーを経験した後、あすかコーポレイトアドバイザリーに参画。早稲田大学商学部卒。 日本証券アナリスト協会検定会員、 慶應義塾大学SFC研究所所員

スタートアップ・ベンチャーが最低限知っておくべきストックオプション制度と税制適格の仕組みとは?

スタートアップ・ベンチャーが最低限知っておくべきストックオプション制度と税制適格の仕組みとは?

(募集事項の決定)第二百三十八条 株式会社は、その発行する新株予約権を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集新株予約権(当該募集に応じて当該新株予約権の引受けの申込みをした者に対して割り当てる新株予約権をいう。以下この章において同じ。)について次に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)を定めなければならない。
一 募集新株予約権の内容及び数
二 募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨
三 前号に規定する場合以外の場合には、募集新株予約権の払込金額(募集新株予約権一個と引換えに払い込む金銭の額をいう。以下この章において同じ。)又はその算定方法
四 募集新株予約権を割り当てる日(以下この節において「割当日」という。)
五 募集新株予約権と引換えにする金銭の払込みの期日を定めるときは、その期日
六 募集新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合には、第六百七十六条各号に掲げる事項
七 前号に規定する場合において、同号の新株予約権付社債に付された募集新株予約権についての第百十八条第一項、第百七十九条第二項、第七百七十七条第一項、第七百八十七条第一項又は第八百八条第一項の規定による請求の方法につき別段の定めをするときは、その定め

募集新株予約権の申込み・割当て又は総数引受契約の締結

(募集新株予約権の申込み)
第二百四十二条 株式会社は、第二百三十八条第一項の募集に応じて募集新株予約権の引受けの申込みをしようとする者に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。
一 株式会社の商号
二 募集事項
三 新株予約権の行使に際して金銭の払込みをすべきときは、払込みの取扱いの場所
四 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

2 第二百三十八条第一項の募集に応じて募集新株予約権の引受けの申込みをする者は、次に掲げる事項を記載した書面を株式会社に交付しなければならない。
一 申込みをする者の氏名又は名称及び住所
二 引き受けようとする募集新株予約権の数

2 次に掲げる場合には、前項の規定による決定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
一 募集新株予約権の目的である株式の全部又は一部が譲渡制限株式である場合
二 募集新株予約権が譲渡制限新株予約権(新株予約権であって、譲渡による当該新株予約権の取得について株式会社の承認を要する旨の定めがあるものをいう。以下この章において同じ。)である場合

3 第一項に規定する場合において、次に掲げるときは、株式会社は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によって、同項の契約の承認を受けなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
一 募集新株予約権の目的である株式の全部又は一部が譲渡制限株式であるとき。
二 募集新株予約権が譲渡制限新株予約権であるとき。

ストックオプションの発行・登記

ストックオプションの行使・株式の売却

(新株予約権の行使)
第二百八十条 新株予約権の行使は、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
一 その行使に係る新株予約権の内容及び数
二 新株予約権を行使する日

(2項以下省略)

大阪市北区西天満5-1-9 新日本曽根崎ビル4階 TEL:06-6365-1251 FAX:06-6365-1252

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株式報酬型ストック・オプションについて

<ポイント>
◆役員退職慰労金に代えて株式報酬型ストック・オプションの発行が増加
◆株式報酬型ストック・オプションは実質無償で付与されることが多い
◆取締役に付与する場合は株主総会決議が必要なことがある

以前、有償ストック・オプションの解説をしましたが、今回は「株式報酬型ストック・オプション」と呼ばれているストック・オプションについて説明します。
有償ストック・オプションの解説記事と同様に、会社の業績を向上させ株価を上昇させることにインセンティブがはたらくことを期待して、役員、従業員(子会社の役員、従業員を含みます。以下同じです)に与えられた新株予約権を「ストック・オプション」と呼ぶこととします。
なお、新株予約権を特に有利な価格で発行する場合(「有利発行」といいます)には株主総会の特別決議が必要です。
しかし、ストック・オプションについては、会社は役員・従業員から業績向上のための努力など一定の価値あるもの(便益・ベネフィット)の提供を期待できるので、通常は有利発行にはあたらないとされています(ただし、子会社の役員、従業員については別論があり、それについては後で述べます)。

株式報酬型ストック・オプションの主な特徴は以下のとおりです。
(1)行使価額(ストック・オプションを行使して株式を取得する際に会社に払い込む1株あたりの金額)が1円であること(そのため「1円ストック・オプション」といわれることもあります)。
(2)ストック・オプションを行使できる期間が20年とか30年の長期にわたること。
(3)役員、従業員の在職期間中は行使できないこと。
(1)のとおり、株式報酬型ストック・オプションは、付与を受けた者は権利行使時の株価とほぼ同じ利益を得られるため、株価が大幅に下がっても株価向上へのインセンティブを持ち続けることが期待できます。
また、(2)と(3)からわかるように、役員の退職慰労金の廃止に伴って導入されることが多く行われています。

ストック・オプションは、市場で認められた算定方法(ブラック=ショールズ・モデルや二項モデルが有名です)によって適切にその価値を評価できるとされています(この適切に評価された価値を「公正価値」といいます)。
ただし、株式報酬型ストック・オプションの殆どの場合、付与を受けた者が公正価値を実際に会社に支払うことはありません(ストック・オプションを取得する際に会社に払い込む金額を「払込金額」といいます)。
公正価値を支払わないでいい理由としては2つの類型があります。
一つは、ストック・オプション発行の際に支払いを要しないと決める場合です。
もう一つは、公正価値を払込金額と決めながら、それと同額の報酬請求権で相殺することにより、実際の支払いを不要とする場合です(前者を「無償構成」、後者を「相殺構成」と呼ぶことが多いので本稿でもそういいます)。
相殺構成の場合、ストック・オプション発行によって役員、従業員の手取額が下がることになりますので、払込金額(=公正価値)分の報酬を従来の報酬に上乗せすることがよく行われています。

取締役に無償構成でストック・オプションを与える場合、株主総会決議が必要となります。会社法361条1項3号により取締役に非金銭報酬を与える場合にはその具体的内容について株主総会で決議しなければならず、無償構成ではストック・オプションの付与は非金銭報酬を与える場合に該当するからです。
これに対して、相殺構成では、取締役が取得するのは報酬請求権という金銭債権ですので非金銭報酬を与える場合にはあたりません。
ただ、金銭による報酬の場合でも、取締役に与える報酬の上限額を株主総会で決議する必要がありますので、ストック・オプションを付与することによりこの上限額を超える場合には株主総会で上限額を引き上げるか、従来の報酬とは別枠で報酬を与える旨の決議が必要になります。

また、子会社の役員、従業員については、無償構成、相殺構成のいずれの場合でも、有利発行にあたるとして株主総会の特別決議を経ることがよく行われています。
ストック・オプションを発行する親会社としては、子会社の役員、従業員からは直接に便益の提供を受けられないからです。
ただし、広い意味での便益の提供があるものとして特別決議なしに発行する会社もあります。
相殺構成の場合、子会社の役員、従業員については、払込金額を支払う相手は親会社で、報酬請求権の相手は子会社ですので、このままでは相殺できなません。
そのため、報酬請求権を親会社が債務引受け等をした上で相殺するという手法が取られています。

【ベンチャー企業法務】SO(ストックオプション)の活用法~優秀な人材確保~

ここでのポイントは、取得時の課税、すなわち「実際には株式を取得した時点でキャピタルゲインを得られるわけではないのに所得税の支払義務が発生してしまう」という点が極めて重要なポイントです。会社が成長していればいるほど、取得時の時価が高騰していますので、実際に利ざやが現金化されていない時点で巨額の税務リスクを負うことになりかねません。その後の売却価額次第では所得税の支払によって実際のキャピタルゲインが大幅に目減りしてしまうこともあり得るのです。

このような本末転倒な事態を生じさせることなく、SOを従業員等のインセンティブとして機能させるために、法令上、一定の要件を満たした場合に課税時期を株式の譲渡時まで繰り延べることができる制度が用意されています。ここではその一定の要件を満たして発行されたSOのことを、一般的に「税制適格SO」と呼んでいます。現在ベンチャー企業の多くは、この税制適格SOを活用することで、人材確保に努めているといえます。

■税制適格SO発行の留意点

①SO自体は無償で発行すること

②SOの権利行使は、SO付与を決議した日から2年を経過した日から付与決議の日から10年を経過する日までの間に行わなければならないこと

③権利行使価額は、付与契約締結時点の時価以上であること

④付与対象者は発行会社やその子会社の取締役・執行役・使用人等であること

⑤付与決議日時点で大口株主等(未公開会社の場合は発行済株式の1/3超の株主)でないこと

■SO付与のあらたな形

ここ最近ベンチャー企業の間で税制適格SOと並ぶ新たな仕組みSOが登場し、活用され始めています。「信託型SO」、「信託SO」などと呼ばれるこの方法について、最後に簡単にご紹介します。

税制適格SOの硬直的な側面のひとつが、「付与対象者が限定的である」という点です。今後ジョインするかもしれないという方や、外部サポーターの方にも付与したいという需要には十分に応えられていませんでした。また、税制適格SOの場合、付与対象者への期待値に応じて付与されることになりますが、その付与対象者が期待に添わない活躍しかしなかった場合、会社は結果として過剰にSOを発行したことになり、資本政策上、あるいは付与対象者間の均衡の観点からも好ましくない事態が生じることになります。

このような課題感に一定程度応えているといわれるのが信託SOです。大まかに説明すると、会社がまず、特定の人物を受託者とする新株予約権(SO)を割当て、一定のルールに従って付与対象者に対して割り当てられたSOを交付する、という仕組みで構成されています。「一定のルール」をどう構築するかなど会社の選択肢が幅広いといわれており、すでに上場企業を含む複数の会社で導入されていますが、税制面含め制度設計には慎重を期すべきで、こちらも専門家への相談が欠かせないものとなりそうです。

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